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猫の抜け毛の原因と対策完全ガイド|換毛期・病気のサイン・掃除のコツまで徹底解説

  • 執筆者の写真: Ryuichi Saika
    Ryuichi Saika
  • 7 日前
  • 読了時間: 22分
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愛猫との暮らしは、かけがえのない癒やしを与えてくれます。しかし、その一方で多くの飼い主が頭を悩ませるのが「抜け毛」の問題です。「掃除してもすぐに毛だらけになる」「黒い服が着られない」「もしかして病気なのでは?」といった悩みは尽きません。


猫の抜け毛には、季節の変わり目に起こる自然な「換毛期」もあれば、ストレスや病気が隠れている危険なサインの場合もあります。大切なのは、その違いを正しく見極め、適切な対策を講じることです。


この記事では、獣医師監修のもと、猫の抜け毛のあらゆる側面を徹底的に解説します。生理現象としての抜け毛のメカニズムから、注意すべき病気のサイン、効果的な対策、そして日々の掃除のコツまで、あなたの悩みを解決するための情報を網羅しました。

この記事を読めば、愛猫の健康を守りながら、抜け毛と上手に付き合っていく方法がきっと見つかるはずです。




猫の抜け毛が起こる主な原因

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猫の抜け毛には、心配のいらない生理現象から、注意が必要な体調不良のサインまで、さまざまな原因が考えられます。まずは、抜け毛がなぜ起こるのか、その主な原因を6つのポイントから見ていきましょう。



1. 換毛期による自然な抜け毛


猫の抜け毛が最も増えるのが「換毛期」です。これは、季節の変化に対応して体温を調節するために、毛が生え変わる自然な生理現象です。多くの猫は、年に2回、春と秋に換毛期を迎えます。


  • 春の換毛期(3月~5月頃): 寒い冬を越すために蓄えた、密度が高く保温性に優れた冬毛が抜け落ち、通気性の良い夏毛に生え変わります。そのため、秋に比べて抜け毛の量が格段に多くなります。

  • 秋の換毛期(9月~11月頃): 夏を過ごした夏毛が抜け、寒さに備えるための冬毛が生えてきます。


この時期の抜け毛は、通常の5倍から10倍にもなると言われており、特に毛量の多い猫種では、ブラッシングをしても追いつかないほど大量に毛が抜けることもあります。



2. ダブルコートとシングルコートの違い


猫の被毛には、大きく分けて「ダブルコート」と「シングルコート」の2種類があり、これも抜け毛の量に大きく関係します。

コートの種類

構造

特徴

抜け毛の量

代表的な猫種

ダブルコート

オーバーコート(上毛)とアンダーコート(下毛)の二重構造

寒暖差から体を守る機能が高い

多い

ペルシャ、メインクーン、アメリカンショートヘア

シングルコート

オーバーコートのみの一重構造

比較的温暖な地域が原産の猫に多い

少ない

シンガプーラ、シャム、コーニッシュレックス

ダブルコートの猫は、特に換毛期にアンダーコートがごっそりと抜け落ちるため、抜け毛の量が多くなります。一方、シングルコートの猫は、換毛期の影響が少なく、比較的抜け毛が少ない傾向にあります。



3. 室内飼いの猫は一年中抜け毛がある


近年、完全室内飼いの猫が増えていますが、その生活環境が抜け毛のパターンに影響を与えることがあります。野生環境とは異なり、エアコンで一年中快適な室温が保たれ、照明によって日照時間も長くなるため、季節の変化を感じにくくなります。

その結果、はっきりとした換毛期がなくなり、一年を通して少しずつ毛が抜け続ける「年中換毛期」のような状態になることがあります。そのため、室内飼いの猫の場合は、季節を問わず、日頃からの抜け毛対策が重要になります。



4. ストレスによる抜け毛


猫は非常に繊細で、環境の変化にストレスを感じやすい動物です。引っ越し、新しいペットや家族の増加、騒音、飼い主とのコミュニケーション不足などがストレスの原因となり、過剰な抜け毛を引き起こすことがあります。

特に、ストレスが原因で同じ場所を執拗に舐め続ける「過剰なグルーミング」は、「心因性脱毛症」とも呼ばれ、腹部や内股、体側などの毛が薄くなってしまうことがあります。これは、猫が不安を和らげるための行動ですが、皮膚を傷つけてしまうこともあるため注意が必要です。



5. 栄養不足による抜け毛


健康な被毛を維持するためには、バランスの取れた栄養が不可欠です。特に、被毛の主成分であるタンパク質や、皮膚の健康をサポートするオメガ3脂肪酸などが不足すると、毛ヅヤが悪くなったり、毛が切れやすくなったりして、抜け毛が増える原因となります。

好き嫌いが多い猫や、特定のフードしか食べない猫は栄養が偏りがちです。海外の獣医学情報サイトでは、栄養不足が過剰な抜け毛の一般的な原因の一つとして挙げられています。



6. 加齢による抜け毛

人間と同じように、猫も年を取ると体に変化が現れます。高齢になると、代謝機能が低下し、毛周期(毛が生え変わるサイクル)が乱れることで、毛質が変化したり、抜け毛が増えたりすることがあります。

また、体力の低下や関節の痛みなどから、若い頃のように頻繁にグルーミングをしなくなることも、抜け毛が目立つ原因の一つです。グルーミングが減ると、本来抜けるべき毛が体に残ったままになり、飼い主が撫でたときにごっそり抜けるように感じることがあります。




病気のサイン?異常な抜け毛の見分け方

毎日のように抜ける愛猫の毛。そのほとんどは心配のない生理現象ですが、中には病気のサインが隠れていることもあります。愛猫の健康を守るために、正常な抜け毛と異常な抜け毛の違いをしっかりと見分けられるようになりましょう。



正常な抜け毛と異常な抜け毛の違い

見分けるポイントは、「抜け方」と「皮膚の状態」です。

項目

正常な抜け毛

異常な抜け毛

抜け方

全体的に均一に抜ける

特定の箇所だけがごっそり抜ける(円形脱毛、まだら状の脱毛)

皮膚の状態

健康的なピンク色で、異常は見られない

赤み、発疹、かさぶた、フケ、傷がある

猫の様子

元気で食欲もある。かゆがる様子はない

体をしきりに掻く、同じ場所を舐め続ける、元気がない、食欲不振

換毛期には驚くほど多くの毛が抜けますが、皮膚が健康で、猫自身が元気であれば、基本的には心配いりません。しかし、脱毛した部分の皮膚が見えていたり、かゆみや炎症を伴ったりする場合は、病気の可能性を疑いましょう。



注意すべき症状


以下のような症状が見られたら、自己判断せずに動物病院を受診することをおすすめします。


  • 部分的な脱毛(円形、まだら状)

  • 皮膚の赤み、発疹、ただれ

  • 激しいかゆみ、頻繁に体を掻く

  • 大量のフケ

  • 脱毛部分を触ると痛がる

  • 元気や食欲がない

  • 頻繁な嘔吐


これらの症状は、次に紹介するような病気が原因となっている可能性があります。




猫の抜け毛を引き起こす病気


過剰な抜け毛や脱毛は、様々な病気のサインとして現れます。ここでは、代表的な病気とその特徴について解説します。



1. 感染症


細菌感染(膿皮症)


ブドウ球菌などの細菌が皮膚で異常増殖することで起こる皮膚炎です。引っかき傷などから細菌が入り込み、発疹やかゆみを引き起こし、猫が掻きむしることで、まだら状に毛が抜けてしまいます。主に胴

体部分に見られることが多いです。


糸状菌感染(皮膚糸状菌症)


カビの一種である糸状菌が皮膚に感染する病気です。かゆみはほとんどありませんが、円形に脱毛し、その周りにフケが出るのが特徴です。顔や手足から始まり、治療が遅れると全身に広がることがあります。この病気は、子猫や免疫力の低い猫がかかりやすく、人間にも感染する「人獣共通感染症(ズーノーシス)」なので特に注意が必要です。



2. 寄生虫


ノミ


ノミが寄生すると、その唾液に対するアレルギー反応で激しいかゆみ(ノミアレルギー性皮膚炎)を引き起こします。猫は体をかきむしったり、噛んだりするため、後頭部や首、腰などを中心に脱毛が見られます。被毛の間には、黒い砂粒のようなノミの糞が確認できることもあります。


疥癬(ヒゼンダニ)


ヒゼンダニという非常に小さなダニが皮膚の角質層にトンネルを掘って寄生する病気です。耐え難いほどの激しいかゆみを伴い、特に耳の縁や肘、膝、腹部などに症状が出やすいです。この病気も人間や他の動物にうつる可能性があるため、早期の治療が重要です。



3. アレルギー・アトピー性皮膚炎


食物(特定のタンパク質など)や、花粉、ハウスダストなどの環境中のアレルゲンに対して免疫が過剰に反応し、皮膚に炎症やかゆみを引き起こします。顔や首、耳の周りなどを中心に、かきむしりによる引っかき傷や脱毛、皮膚の赤みが見られます。



4. ホルモン疾患


甲状腺機能亢進症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)といった内分泌系の病気によって、ホルモンバランスが崩れると、毛周期が乱れて抜け毛が増えることがあります。これらの病気では、左右対称性の脱毛が見られることが多く、多飲多尿や食欲の変化、体重減少といった他の症状を伴うこともあります。



5. 過剰なグルーミング(心因性脱毛症)


前述の通り、ストレスや不安が原因で、猫が自分自身を過剰にグルーミングし、毛を舐め切ってしまう状態です。舐めやすい腹部や内股、脇腹などの毛が短くなったり、薄くなったりします。皮膚に炎症がないのに毛だけがない場合は、この可能性が考えられます。


異常な抜け毛に気づいたら、まずはスマートフォンなどで脱毛部分の写真を撮っておきましょう。時系列で変化を記録したり、獣医師に症状を正確に伝えたりするのに役立ちます。




猫の抜け毛が引き起こす健康リスク


抜け毛は、部屋が汚れるだけでなく、猫自身や飼い主の健康に影響を及ぼす可能性もあります。



毛球症(ヘアボール)


猫はグルーミング(毛づくろい)の際に、抜けた毛を大量に飲み込んでしまいます。通常、飲み込んだ毛は便と一緒に排出されたり、吐き出されたりしますが、その量が多いと胃や腸の中で絡まって毛玉(毛球)を形成してしまうことがあります。これが「毛球症」です。

毛球が大きくなると、食欲不振、嘔吐、便秘などの症状を引き起こします。特に、長毛種は飲み込む毛の量が多いため、毛球症のリスクが高いと言われています。まれに、毛球が腸に詰まって腸閉塞を起こし、命に関わるケースもあるため、軽視はできません。



胃炎・食道炎


頻繁に毛玉を吐くことで、胃や食道が刺激され、慢性的な炎症を引き起こす可能性があります。



飼い主のアレルギー発症


「猫アレルギー」の原因は、猫の毛そのものではなく、主に唾液や皮脂腺から分泌される「Fel d 1」というタンパク質です。このアレルゲンが、グルーミングによって毛やフケに付着し、抜け毛とともに空気中に飛散します。そのため、抜け毛が多いとアレルゲンが拡散しやすくなり、飼い主のアレルギー症状(くしゃみ、鼻水、目のかゆみなど)を悪化させる原因となります。




効果的な猫の抜け毛対策7選


愛猫の抜け毛を完全になくすことはできませんが、適切なケアによって、その量をコントロールし、部屋の清潔を保つことは可能です。ここでは、今日から始められる効果的な抜け毛対策を7つ紹介します。



1. こまめなブラッシング


抜け毛対策の基本中の基本は、こまめなブラッシングです。ブラッシングには、以下のような多くのメリットがあります。


  • 死毛の除去: 自然に抜け落ちる前に不要な毛を取り除くことで、部屋に散らばる毛の量を減らします。

  • 毛球症の予防: 猫がグルーミングで飲み込む毛の量を減らし、毛球症のリスクを低減します。

  • 血行促進: 皮膚を適度に刺激し、血行を良くして健康な被毛の成長を促します。

  • 皮膚の異常の早期発見: 皮膚の状態を直接チェックできるため、皮膚炎などの異常を早く見つけられます。

  • コミュニケーション: 愛猫とのスキンシップの時間となり、信頼関係を深めます。

  • ブラッシングの頻度は、猫の毛の長さによって調整しましょう。

  • 長毛種: 毛が絡まりやすいため、毎日1回が理想です。

  • 短毛種: 週に3~4回程度を目安に行いましょう。


換毛期には、長毛種・短毛種にかかわらず、できれば毎日ブラッシングしてあげるのがおすすめです。



2. 猫種・毛質に合ったブラシの選び方


ブラシには様々な種類があり、猫の毛質や目的に合わせて使い分けることが重要です。間違ったブラシを使うと、皮膚を傷つけたり、猫がブラッシングを嫌いになったりする原因にもなります。

ブラシの種類

特徴

おすすめの猫種

主な用途

スリッカーブラシ

「く」の字に曲がった細いピンが密集している

長毛種、ダブルコート

毛玉の予防、アンダーコートの除去

ラバーブラシ

ゴムやシリコン製で、肌あたりが柔らかい

短毛種、ブラッシングが苦手な猫

マッサージ効果、抜け毛の除去

デシェディングツール

刃が付いており、アンダーコートを効率的に除去

換毛期のダブルコートの猫

大量の抜け毛の除去(週1回程度)

コーム

金属製の櫛

全猫種

毛並みを整える、毛玉のチェック、仕上げ

特に、換毛期に威力を発揮するのが「デシェディングツール(ファーミネーターなど)」です。ただし、健康な毛まで抜いてしまう可能性があるため、使いすぎには注意し、週に1回程度の使用に留めましょう。



3. 定期的なシャンプー


シャンプーは、抜け毛やフケ、皮脂汚れを一度に洗い流すのに非常に効果的です。多くの猫は水を嫌いますが、月1回程度を目安にシャンプーをしてあげると、皮膚を清潔に保ち、抜け毛対策にもなります。

シャンプーをする際は、必ず猫専用のものを使用してください。人間用のシャンプーは洗浄力が強すぎ、猫の皮膚にダメージを与える可能性があります。最近では、抜け毛対策に特化した「デシェディングシャンプー」も市販されています。



4. 栄養バランスの良い食事


健康な皮膚と被毛は、内側からのケア、つまり食事が基本です。抜け毛対策として、以下のような栄養素を意識したフード選びが効果的です。


  • 良質なタンパク質: 被毛の主成分であり、健康な毛の成長に不可欠です。

  • オメガ3・オメガ6脂肪酸: 皮膚の潤いを保ち、炎症を抑える効果が期待できます。

  • 食物繊維: 飲み込んでしまった毛の排出を助け、毛球症を予防します。


多くのプレミアムフードにはこれらの栄養素がバランス良く配合されていますが、「ヘアボールコントロール」や「皮膚・被毛ケア」といった特定の機能に特化したフードを選ぶのも良いでしょう。



5. ストレス管理


ストレスによる過剰なグルーミングや脱毛を防ぐためには、猫が安心して暮らせる環境を整えることが大切です。


  • 安定した生活環境: 頻繁な模様替えや大きな音を避ける。

  • 十分な運動と遊び: おもちゃで遊ぶ時間を毎日作り、エネルギーを発散させる。

  • 隠れ場所の確保: 猫が一人で静かに過ごせる、段ボール箱やキャットタワーなどを用意する。

  • フェロモン製剤の活用: 猫のフェイシャルフェロモンを模した製品(スプレーや拡散器タイプ)を使い、猫をリラックスさせる。



6. サマーカット(長毛種)


ペルシャやメインクーンなどの長毛種の場合、夏場の暑さ対策と抜け毛対策を兼ねて、毛を短くカットする「サマーカット」も一つの選択肢です。ただし、毛を短く刈りすぎると、紫外線から皮膚を守る機能が低下したり、体温調節がうまくできなくなったりするデメリットもあります。サマーカットを行う場合は、プロのトリマーに相談し、適切な長さを残してもらうようにしましょう。



7. 定期的な健康チェック


病気が原因の抜け毛を早期に発見するためにも、定期的な健康チェックが欠かせません。年に1回は動物病院で健康診断を受け、寄生虫の予防薬も定期的に投与しましょう。そして何より、日々のブラッシングやスキンシップを通して、愛猫の皮膚や被毛の状態、行動の変化に気を配ることが、病気の早期発見につながります。




抜け毛が多い猫種・少ない猫種


これから猫を迎えようと考えている方や、自身の愛猫の抜け毛が多い理由を知りたい方のために、抜け毛が多い猫種と少ない猫種をランキング形式でご紹介します。ただし、個体差があることを念頭に置いて参考にしてください。



抜け毛が多い猫種ランキングTOP5

抜け毛が多い猫の多くは、保温性の高いアンダーコートを持つ「ダブルコート」の猫種です。特に換毛期には大量の毛が抜けます。

順位

猫種

特徴

1位

ペルシャ

長毛種の代表格。ゴージャスな被毛は非常に密度が高く、毎日のブラッシングが欠かせません。

2位

メインクーン

「穏やかな巨人」と呼ばれる大型の長毛種。豊かな被毛は換毛期に特に多く抜けます。

3位

ラグドール

絹のような美しい被毛を持つ長毛種。毛が絡まりやすいため、こまめなケアが必要です。

4位

アメリカンショートヘア

短毛種ですが、密度の高いダブルコートを持つため、見た目以上に抜け毛が多いことで知られています。

5位

スコティッシュフォールド

折れ耳が特徴の人気猫種。短毛・長毛どちらも存在し、ダブルコートのため抜け毛は多めです。

抜け毛が少ない猫種ランキングTOP5


抜け毛が少ない猫は、アンダーコートがない「シングルコート」の猫種や、特殊な被毛を持つ猫種が中心です。

順位

猫種

特徴

1位

スフィンクス

「ヘアレスキャット」の名の通り、産毛程度の毛しかありません。抜け毛の心配はほぼありませんが、皮脂の分泌が多いため、定期的に体を拭くなどの皮膚ケアが必要です。

2位

コーニッシュレックス

細かくウェーブした、ビロードのような手触りの被毛が特徴。シングルコートで抜け毛は非常に少ないです。

3位

デボンレックス

コーニッシュレックスと同様に、短くカールした被毛を持ちます。抜け毛が少なく、お手入れも比較的簡単です。

4位

シンガプーラ

「世界最小の猫」として知られる短毛・シングルコートの猫種。抜け毛は非常に少ないです。

5位

ロシアンブルー

短毛のダブルコートですが、毛が体に密着して生えているため、他のダブルコートの猫種に比べて抜け毛が少ないと言われています。

【注意】抜け毛が少なくてもアレルギーは起こる 抜け毛が少ない猫種は、アレルギーを持つ人にとって選択肢の一つとなり得ます。しかし、前述の通り、猫アレルギーの主な原因は毛ではなく、唾液や皮脂に含まれるアレルゲンです。そのため、抜け毛が少ないからといって、アレルギー症状が全く出ないわけではないことを理解しておく必要があります。




部屋の抜け毛掃除のコツ


毎日のケアを頑張っても、どうしても部屋に散らばってしまう愛猫の毛。効率的に掃除して、快適な空間を保つためのコツをご紹介します。



1. 掃除機のかけ方


  • 掃除の基本は掃除機ですが、ただかけるだけでは舞い上がってしまう毛を取り逃がしがちです。効果を高めるために、以下の点を工夫してみましょう。

  • 霧吹きで湿らせる: 掃除機をかける前に、霧吹きで軽く部屋全体を湿らせると、毛が舞い上がるのを防ぎ、吸い取りやすくなります。

  • ペット用ヘッドの活用: 最近の掃除機には、ペットの毛が絡まりにくいように工夫されたヘッドが付属していることがあります。積極的に活用しましょう。

  • ロボット掃除機の導入: 留守中に自動で掃除してくれるロボット掃除機は、抜け毛対策の強い味方です。毎日稼働させることで、毛が蓄積するのを防ぎます。



2. コロコロ(粘着ローラー)


ソファやカーペット、ベッドなど、布製品についた毛には粘着ローラー(コロコロ)が手軽で効果的です。掃除機をかける前にサッと使うことで、掃除の効率が格段にアップします。



3. ゴム手袋を使った掃除


意外なアイテムですが、ゴム手袋も抜け毛掃除に大活躍します。水で少し湿らせたゴム手袋でカーペットやソファを撫でると、静電気の力で毛が面白いように集まります。集まった毛をまとめて捨てるだけなので、非常に簡単です。



4. 空気清浄機の活用


空気中に舞っている抜け毛や、それに付着したアレルゲンを除去するには、空気清浄機が有効です。特に、ペットの毛やニオイに特化したフィルターを備えたモデルを選ぶと良いでしょう。24時間稼働させておくことで、床に落ちる前の毛をキャッチしてくれます。



5. 床材別の掃除方法

床材

掃除のポイント

フローリング

まずドライタイプのフロアワイパーで毛を集め、その後、水拭きやウェットタイプのワイパーで仕上げると、静電気で残った毛もきれいに取れます。

カーペット・ラグ

毛が繊維の奥に入り込みやすいため、ゴム手袋やペットの毛専用のブラシで毛をかき出してから、掃除機をかけるのが効果的です。

畳の目に沿って、ゆっくりと掃除機をかけます。力を入れすぎると畳を傷めるので注意しましょう。




服についた猫の毛の取り方

お気に入りの服が猫の毛だらけ、というのも飼い主共通の悩みです。外出前に慌てないための、効果的な毛の取り方と予防策をご紹介します。



1. 粘着ローラー・エチケットブラシ


外出前の身だしなみとして、粘着ローラーやエチケットブラシは必需品です。衣類を傷めにくい、衣類専用のものを使いましょう。



2. 濡れた手で撫でる


道具がない緊急時には、手を少し湿らせて服の表面を優しく撫でるだけでも、多くの毛を取り除くことができます。



3. 洗濯前の対策


洗濯機に入れる前にひと手間加えるだけで、仕上がりが大きく変わります。


  • 乾燥機で予備乾燥: 洗濯前に衣類を乾燥機に5~10分かけると、温風で多くの毛が吹き飛ばされ、フィルターに集まります。

  • 粘着ローラーで事前除去: 特に毛が多くついている部分は、洗濯前にコロコロで取っておきましょう。



4. 洗濯時の工夫


  • ペットの毛専用洗剤・柔軟剤: 静電気の発生を抑え、毛が付きにくく、取れやすくなる効果が期待できます。

  • 洗濯ボール: 洗濯機に入れると、水流の中で衣類と絡みつき、毛を絡め取ってくれる専用グッズも市販されています。

  • 洗濯槽の定期清掃: 洗濯槽に溜まった毛が、他の衣類に再付着するのを防ぐため、定期的に清掃しましょう。



5. 服選びの工夫


日頃から、毛が付きにくい、または目立ちにくい服を選ぶのも賢い方法です。


  • 素材: 綿やニット、フリースなどは毛が付きやすいため、ポリエステルやナイロンなどのツルツルした化学繊維の服がおすすめです。

  • 色: 愛猫の毛色に合わせて服の色を選ぶと、付着した毛が目立ちにくくなります。




動物病院に連れて行くべき症状


多くの抜け毛は生理現象ですが、中には病気のサインが隠れていることもあります。どのような場合に動物病院へ行くべきか、その判断基準を明確にしておきましょう。



すぐに受診すべき症状


以下の症状が見られる場合は、単なる抜け毛ではない可能性が高いです。早めに獣医師の診察を受けましょう。


  • 部分的な脱毛: 円形やまだら状に毛が抜けて、地肌が見えている。

  • 皮膚の異常: 脱毛部分やその周辺に、赤み、発疹、かさぶた、ただれなどが見られる。

  • 激しいかゆみ: 体をしきりに掻いたり、家具にこすりつけたり、同じ場所を執拗に舐めたり噛んだりする。

  • その他の症状: 大量のフケ、元気や食欲の低下、体重の減少、頻繁な嘔吐や下痢などを伴う。


これらの症状は、感染症、寄生虫、アレルギー、内分泌疾患など、治療が必要な病気の可能性を示唆しています。



様子を見てもよい場合


一方で、以下のような状況であれば、緊急性は低いと考えられます。


  • 抜け毛の抜け方: 全体的に均一に抜けている。

  • 皮膚の状態: 皮膚に赤みやかゆみなどの異常がない。

  • 猫の様子: 元気で食欲もあり、普段と変わらない様子。


春や秋の換毛期には、健康な猫でも驚くほどの毛が抜けます。猫の様子や皮膚の状態に異常がなければ、まずはブラッシングなどのホームケアを続けながら、注意深く観察しましょう。ただし、少しでも不安な点があれば、遠慮なくかかりつけの獣医師に相談することが大切です。




猫の抜け毛対策Q&A


ここでは、飼い主さんからよく寄せられる、猫の抜け毛に関する質問にお答えします。



Q1: 室内飼いの猫も換毛期はありますか?


A1: はい、ただし、その現れ方は屋外で暮らす猫とは異なります。一年中快適な環境で過ごす室内飼いの猫は、季節の変化を感じにくいため、春や秋に集中して毛が抜ける「明確な換毛期」が見られないことがあります。その代わり、一年を通して少しずつ毛が抜け続ける傾向があります。とはいえ、やはり日照時間の影響などから、春や秋には抜け毛が増えることが多いです。



Q2: ブラッシングを嫌がる猫への対処法は?


A2: まずは、猫がブラッシングを嫌がる原因を探ってみましょう。以前使っていたブラシで痛い思いをした経験があるのかもしれません。肌あたりの柔らかいラバーブラシや、撫でるように使えるグローブ型のブラシから試してみるのがおすすめです。また、一度に全身をやろうとせず、まずは背中など猫が嫌がらない場所から始め、数分で終えるようにします。そして、終わった後にはおやつなどのご褒美をあげて、「ブラッシング=良いことがある」と関連付けてもらうのが効果的です。



Q3: 抜け毛が少ない猫種でも猫アレルギーは起きますか?


A3: はい、起こります。これは非常に重要なポイントですが、猫アレルギーの原因物質(アレルゲン)は、毛そのものではなく、主に猫の唾液や皮脂腺に含まれるタンパク質です。グルーミングによって、そのアレルゲンが毛に付着し、抜け毛とともに環境中に拡散します。抜け毛が少ない猫種は、アレルゲンの飛散量が少ないため、症状が出にくい可能性はありますが、アレルゲンがゼロになるわけではありません。猫アレルギーの方が猫を飼う場合は、事前にアレルギー専門医や獣医師に相談することが不可欠です。



Q4: サマーカットは必要ですか?


A4: 必ずしも必要ではありません。特に長毛種の場合、夏場の暑さ対策や毛玉防止、抜け毛の軽減を目的として行われることがありますが、デメリットも理解しておく必要があります。被毛には、直射日光や紫外線から皮膚を守ったり、体温を調節したりする重要な役割があります。短く刈りすぎると、これらの機能が損なわれる可能性があります。もしサマーカットを検討する場合は、その必要性や適切な毛の長さについて、獣医師やプロのトリマーとよく相談しましょう。



Q5: 毛球症の予防に最も効果的な方法は何ですか?


A5: 最も効果的で重要なのは、こまめなブラッシングです。猫が飲み込んでしまう毛の量を物理的に減らすことが、毛球症の根本的な予防につながります。それに加えて、フードを食物繊維が豊富な「毛玉ケア」用のものに切り替えたり、毛玉の排出を促すサプリメント(猫草や毛玉除去剤など)を活用したりするのも良いでしょう。また、十分に水分を摂ることも、便通をスムーズにし、毛の排出を助けます。




まとめ|猫の抜け毛と上手に付き合うために


猫の抜け毛は、多くの飼い主にとって悩みの種ですが、そのほとんどは自然な生理現象です。大切なのは、日々のケアを通して愛猫の健康状態を把握し、異常のサインを見逃さないことです。

この記事で解説したポイントを改めて振り返っておきましょう。


  • 原因の理解: 抜け毛には換毛期、猫種、生活環境、ストレス、病気など様々な原因があることを理解する。

  • 異常の察知: 「部分的な脱毛」や「皮膚の異常」、「激しいかゆみ」は病気のサイン。早めに動物病院へ。

  • 日々のケア: 最も効果的な対策は、こまめなブラッシング。猫に合ったブラシを選び、コミュニケーションの時間として楽しむ。

  • 食事と環境: 栄養バランスの取れた食事と、ストレスの少ない生活環境が、健康な被毛を育む。

  • 効率的な掃除: 掃除機、コロコロ、ゴム手袋、空気清浄機などを活用し、清潔な環境を維持する。


抜け毛は、愛猫が生きている証でもあります。完璧を目指しすぎず、少しでも多くの毛を取り除いてあげよう、という気持ちでケアを続けることが、猫と飼い主双方の快適な暮らしにつながります。この記事が、あなたの愛猫との生活をより豊かにするための一助となれば幸いです。

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猫4匹と実家の柴犬2匹と暮らしています。多頭飼いの楽しさと大変さ、日々の工夫をゆるっとシェアしています。

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